【前編】中小企業支援の本質は「粗利と自由度」にあるのでは?

こんにちは、東広島市議会議員の上岡裕明です。

今回は、市民経済委員会で進めている 「中小企業支援」 の所管事務調査について、
執行部への聴き取りを経て見えてきた現状の整理を、私なりの視点でまとめました。

先日所管事務調査が始まり、最初の執行部聞き取りが行われました。
その資料や回答内容の資料も添付したいのですが、おそらくNGだと思いますので感想だけを少し。

  • 中小企業には段階的・多様な課題がある
  • 業種・規模・経営状態によって必要な支援も異なる
  • そのため市としては「個別の事情に合わせて支援している」

という趣旨の説明が中心でした。

私としては今回の議論を通じて、もっと構造的な共通の根があるのではないかと感じ、
これを機に整理しようと思い書き込んでいます。


■ 現時点での結論

中小企業の課題のセンターピンは、

粗利と自由度(お金+時間+交渉力)の不足では、と思っています。

これは単に「経営の問題」ではなく、
人材不足・DXの遅れ・事業承継・地域の元気の低下、すべてへ連鎖する構造的な課題。

この粗利と自由度という点は、
今回の所管事務調査を進めるうえで、極めて大事な軸になると考えています。

■ なぜ「粗利と自由度」がセンターピンなのか?

中小企業の現場で聞こえる課題は多岐にわたります。

  • 人が来ない/採れない
  • 人が辞める
  • DXが進まない
  • 価格転嫁ができない
  • 賃上げできない
  • 後継者が見つからない
  • 忙しくて改善する時間がない

しかし、よく見るとこれらは別々の問題ではない気がしています。

■ 全部つながっている。

そしてその根にあるのが、
粗利が薄いこと、自由度がない(お金+時間+交渉力)ことかと。

■ 粗利が薄いと、すべての“余白”が奪われる

粗利とは、
売上から原価を引いた、企業が自由に使える、いわゆる「ゆとり」の部分

でも粗利が薄いと…

  • 賃上げできない
  • 人材育成に時間を使えない
  • 採用コストをかけられない
  • 設備投資やDXができない
  • 経営者の時間が「現場対応」で埋まる
  • 戦略が練れない
  • 価格交渉で弱くなる
  • 新しいことを試せない

つまり、お金・時間・交渉力のすべての余白が消えてしまいます。

この「余白の喪失」が、
人材不足 →余裕がない→ DX停滞 → 生産性低下 → 承継困難
という連鎖を生み出していると考えています。

■ 人材不足の正体は「原因」ではなく結果では?

中小企業は「人が来ない」という言葉をよく耳にしますが、これは原因ではなく結果とも捉えることができます。

人口減少と人手不足の中で、人材確保をするために求められるのは、

  • 教育できる余力
  • 失敗を許す余白
  • 挑戦できる社風
  • 待遇改善の原資

などがあげられますが、粗利が薄い企業には対応が難しくなってきます。

だから、

  • 良い人材を選べない
  • 即戦力しか採れない
  • 新人育成ができない
  • マニュアル対応ばかりになる
  • クリエイティビティが低下する
  • 若者が定着しない

というスパイラルに陥ることに・・・。

つまり、
人材不足は粗利と自由度が奪われた結果として発生しているのかと。

■ イノベーションが起きないのも同じ構造

そして、恐らくですが粗利と自由度が失われると、
企業は「守りの組織」になっていきます。

  • リスクをとれない
  • 若い人の挑戦が評価されにくい
  • 試作・検証に時間を割けない
  • 新しい価値づくりより、既存の作業に追われる

この結果、企業文化は

間違えないこと>新しい価値づくり

に寄っていくでしょう。

人口減少社会の問題は、
イノベーション余力の蒸発

これもまた、粗利と自由度が奪われているから起こる現象。

■ 外側の構造も粗利を圧迫している

中小企業の粗利が薄くなる背景には、
企業努力ではどうにもならない外的要因もあると思います。
例えば、

● ① サプライチェーン構造

ティア1 → ティア2 → ティア3 の多重下請け構造では
「価格転嫁がしにくい」
という構造的な圧力が働きます。

● ② 公定価格の産業

医療・介護・保育・福祉などは、自分たちで価格を決められないため、
「粗利を増やす=経営努力」だけでは限界があります。
この分野に対しては、DXや業務切り出しによる「時間の余白(コスト削減)」の支援がより重要になると思います。

● ③ 世界経済・原材料費・為替

外部ショックが直撃し、粗利を圧迫します。

これらを踏まえると、
粗利と自由度の不足は構造問題が強いと理解できますし、
業種によって「攻め(単価アップ)」と「守り(時間創出)」の支援の重み付けを変える目線が重要なのではと感じます。

■ 今、私たちが向き合うべき問い

所管事務調査の議論を通じて、
東広島市として向き合うべき課題を以下に整理してみます。

① 粗利をどう増やすか?

単なる売上増ではなく、
単価・構成・価格改定・顧客価値の見直しが重要。

② 企業の自由度(お金+時間+交渉力)をどう取り戻すか?

  • 業務の棚卸(外部に委託できるように業務の切り出し)
  • 副業人材
  • 小粒DX
    などで企業に時間の余白をつくる。

③ 支援を「点」ではなく「流れ」で設計できるか?

価格 → 人材 → DX → 承継
一社ごとのストーリーで支援できるか

④ Hi-Biz(ハイビズ)の役割をどう再定義するか?

  • チラシやSNSの相談ではなく
  • 粗利の出る売上構造(価値・顧客・単価)をつくるフロント支援にするのか?
  • それとも創業・第二創業支援に特化するのか?

また、高度なコンサルティングは相談員の能力に依存するため、「属人的なモデルにおける人材確保」も同時に見定めなければなりません。

本来、ビズモデルは「売上を上げるための無料支援」という型が基本ですが、そこに粗利や利益を残すという視点がどれだけ組み込まれているかは重要な論点です。

「売上向上以外の支援はビズモデルの型から逸脱するため難しい」という見解もありましたが、型(モデル)を守るために支援があるわけではありません。従来の業務範囲を超えてでも、地域企業の課題(粗利と自由度)に踏み込んだ支援へと進化できるのか。その覚悟が問われていると思います。

⑤ 商工会議所・金融機関・地域の人事部とどう連携するか?

東広島市全体で、
一社一カルテ×一社一ストーリーをつくれるか。

■ 最後に(後編に続きます)

行政として、
この視点を軸にした 構造的な支援モデル を描くこと。

それこそが、
人口減少時代の東広島市にとって必要な中小企業支援であり、
地域の活力を未来につなぐカギになると私は考えています。

次回の【後編】では、
今回の分析を踏まえたうえで、

  • 価格転嫁の支援
  • 地域の人事部の立ち上げ
  • 副業人材の受け入れ
  • DXと省人化の現実解
  • 1社1カルテ支援の実装
  • Hi-Biz のあり方(フロント型か?創業特化か?)

など、東広島モデルの支援施策の構想を整理していきます。