今回は全国的な目線でも言えますが、合併市である東広島市で起こっていることについて触れていきたいと思います。
中でも、東広島市って、大学もあり半導体企業もあり人口が増えていて「成長している市」として語られることが多いですよね。
でも実際に地区ごとのデータを見ていくと、ちょっと違う景色が見えてきます。
今回は住民基本台帳(2025年12月末)と市の統計資料をもとに、9つの地区を一つひとつ分解してみました。
見えてきたのは「東広島市は1つの市であるのですが、9つの全然違う町が同居している」という話です。
この記事の主な内容はこちらです。
- 9地区のデータを並べると何が見えるか
- 「平均値」が隠しているもの
- 合併市が抱える構造問題とは何か
- 「経営」という視点で考えると何が変わるか
当事者目線も交えながら書いていきます。
まず数字を並べてみる
地区ごとの高齢化率(65歳以上の割合)を出してみると、こうなります。
(参照:東広島市2025年12月 年齢別人口)
| 地区 | 人口 | 高齢化率 | 担い手1人あたり高齢者数 |
|---|---|---|---|
| 西条町 | 86,736人 | 15.1% | 0.24人 |
| 八本松町 | 29,879人 | 24.1% | 0.43人 |
| 高屋町 | 29,381人 | 31.0% | 0.60人 |
| 黒瀬町 | 21,346人 | 34.6% | 0.68人 |
| 河内町 | 5,112人 | 43.3% | 0.98人 |
| 志和町 | 5,912人 | 45.9% | 1.06人 |
| 安芸津町 | 8,137人 | 46.0% | 1.04人 |
| 福富町 | 2,070人 | 47.1% | 1.12人 |
| 豊栄町 | 2,727人 | 52.5% | 1.35人 |
※「担い手1人あたり高齢者数」は20〜64歳の1人が支える65歳以上の数
西条町が15.1%で、豊栄町が52.5%。同じ市に属しながら、37ポイントもの差があります。
日本全体の高齢化率がだいたい30%前後なので、西条町はその半分の若さ、豊栄町は全国平均をはるかに超えた水準ということになります。
「担い手1人あたり高齢者数」という指標も出してみました。これは20〜64歳の就業できる世代1人が、何人の高齢者を支えているかの目安です。1.0を超えると担い手より高齢者の方が多い状態です。
志和町・安芸津町・福富町・豊栄町の4地区はすでにその水準を超えています。
産業構造もまったく違う
人口だけではなくて、どんな産業で地域が成り立っているかも地区によってバラバラです。
就業者の産業構成を調べてみると、こんな感じになります。
| 地区 | 第1次産業 | 第2次産業 | 第3次産業 | 一言で言うと |
|---|---|---|---|---|
| 西条町 | 1.6% | 28.4% | 70.1% | 都市サービス型 |
| 八本松町 | 2.7% | 37.2% | 60.0% | 製造業集積型 |
| 志和町 | 12.8% | 32.5% | 54.8% | 工業拠点・農村型 |
| 高屋町 | 3.1% | 30.7% | 66.2% | 居住・通勤型 |
| 黒瀬町 | 4.1% | 33.3% | 62.6% | 広島市近接型 |
| 福富町 | 18.1% | 22.7% | 59.2% | 農業・里山型 |
| 豊栄町 | 18.9% | 29.6% | 51.5% | 農業・農村型 |
| 河内町 | 10.0% | 25.5% | 64.5% | 混合・空港近接型 |
| 安芸津町 | 11.0% | 31.2% | 57.8% | 水産・農業・港町型 |
西条町は就業者の70%がサービス業・商業・行政などの第3次産業。
志和町は山陽道ICがあって、製造業の工場が人口の約50%に相当する職場数を抱えている工業拠点。
でも住んでいる人の高齢化率は46%という農村でもある。ちょっと二面性がありますよね。
安芸津町は牡蠣や農業、港のある瀬戸内の町で、産業構造からもはっきりその色が出ています。
これだけ違うのに、同じ「東広島市」として括られているわけです。
「市全体の平均」が隠しているもの
「東広島市全体の高齢化率は25%」という数字は確かに正しい。
でもこの数字、少し注意が必要で。
市全体の人口の約45%は西条町が占めています。西条町の高齢化率が15%と低いので、それが全体の平均を大きく押し下げているんですよね。
市全体の人口が増えているのも、主に西条町と八本松町の一部の話です。周辺地域は静かに人口が減り続けています。
これ、「平均値の罠」というか、一つの数字で見ていると実態が見えにくくなるという典型例だと思っています。
政策を考えるときに「市全体の平均」だけ見ていると、問題の深さや場所がずれてしまう。だからこそ地区ごとに分解してみることが大事だと感じています。
これは東広島市だけの話じゃない
ここで少し視点を広げると、この構造問題は東広島市に限った話ではないんですよね。
平成の大合併(1999〜2010年)で、日本全国の市町村数は約3,200から約1,700に半減しました。その多くが、ある程度都市機能のある旧市と、周辺の旧町村が一緒になった形です。
「規模の経済でコストを下げよう」という建前で合併したわけですが、現実には中心部と周辺部の格差が広がりやすく、周辺の声が届きにくくなるという問題が全国各地で起きています。
東広島市がダメなのではなくて、日本中の合併市が同じ問いに直面しているというのが正直なところだと思っています。
「経営」という言葉で考えてみる
企業で言えば、複数の事業を持つ会社がそれぞれの事業をどう育てるか、縮小するか、全体として成立させるかを考えますよね。いわゆるポートフォリオ経営という考え方です。
合併市の行政も、本質は同じ問いを持つべきじゃないかと思っていて。
例えば西条町と豊栄町に同じ基準で同じサービスを提供しようとすると、どちらにとっても「ちょうど良い」ものにならない。規模も構造も課題も違いすぎるから。
縮小していく地域には、どう尊厳を持ってスケール調整をしていくかという戦略が要るし、成長している地域があれば「その恩恵を市全体にどう還流させるか」という問いが要る。
これは「周辺を切り捨てよう」という話とは反対で、
現実を直視した上で、それぞれの地域に合った手を打つことが、地域への誠実さだと考えています。
安芸津町にいるからこそ見えること
私が住んでいる安芸津町は、担い手1人あたりの高齢者数が1.04人という数字は、肌感覚としてよくわかります。
祭りの準備、消防団、子どもの見守り、農業の担い手。「誰がやるか」という問いが、いたるところにあります。
一方で、安芸津町には牡蠣・じゃがいも・三浦仙三郎の歴史・シャインマスカット・瀬戸内へのフェリー、という固有の資源もある。数字が示す厳しさと、地域の持つ可能性は、同時に存在しています。
「縮んでいく現実」と「まだできることがある」の狭間で、何を選択するか。
その判断の根拠として、こういうデータをちゃんと持っておきたいと思っています。
使ったデータについて
- 住民基本台帳(2025年12月末現在):東広島市公式サイトより取得。地区別・年齢別人口から高齢化率・担い手比率等を算出。
- 統計でみる東広島2023
上岡裕明(うえおか ひろあき) 東広島市議会議員・安芸津町在住 デザイン・まちづくり・議会活動について書いています。